塗り足し3mmの理由と作り方|Illustrator/InDesign対応
目次
結論(ここだけ押さえればOK)
- 塗り足し=仕上がり外側の余白を“色や画像で延長”する領域。日本の商業印刷は3mmが標準的な指定。
- 断裁には±数ミリの誤差が出るので、塗り足しがないと白フチが出る。
- 文字やロゴは“安全エリア”に…仕上がり線から3–5mm内側に収める。
- 出力はPDF/X-4推奨+トンボと裁ち落とし3mmを付けて書き出す。
(PDF/Xの詳説は → 「PDF/Xって結局なに?最短で通る入稿設定」)
塗り足し解説動画
この動画が現場目線で1番理解しやすいです。
そもそも塗り足しとは?
断裁機は高精度でも完全なゼロ誤差ではないため、仕上がり線ピッタリで切れる保証はありません。
そこで、仕上がり外側に3mmだけ背景色や画像を 延ばしておく(=塗り足し)と、多少ズレても白が出ず、“見た目そのまま” に仕上がります。
- 仕上がり線:実際に切られて残るサイズ
- 塗り足し(3mm):外側に延ばす色・画像
- 安全エリア(3–5mm):内側に確保する余白(文字・ロゴの避難所)
目安:チラシ・ペラ・冊子の表紙など基本は四辺3mm。
のど側(内側) は製本仕様によって扱いが変わる(後述)。
Illustrator:作り方(新規/既存)
新規ドキュメント
- ファイル → 新規
- アートボードサイズ=仕上がりサイズ(例:A4 210×297mm)
- 裁ち落としを上下左右3mmに設定
- 背景ベタや写真は仕上がり線を超えて3mm外側まで配置
- 文字・ロゴは仕上がり線から3–5mm内側にレイアウト
既存データに追加
- ファイル → ドキュメント設定 → 裁ち落とし上下左右を3mm
- 背景・写真オブジェクトをアートボード外側まで拡張(見た目だけ延びた“クリッピング”はNG。実体を延ばす)
- ファイル → 別名で保存 → PDF → PDF/X-4
- トンボ:日本式(センタートンボ)
- 裁ち落とし:ドキュメントの裁ち落とし設定を使用にチェック
InDesign:作り方(単ページ/見開き)
新規ドキュメント
- ファイル → 新規 → ドキュメント
- サイズ=仕上がり、裁ち落とし3mm(上下左右)
- 背景・写真フレームを仕上がり外側まで伸ばす
- 文字・ロゴは内側3–5mmに収める
- 書き出し:ファイル → 書き出し → Adobe PDF(印刷) → PDF/X-4
- トンボON、裁ち落とし:ドキュメントの設定を使用ON
見開き(冊子)の注意
- 基本:のど側(内側)は断裁しないので塗り足し0mmでOK。
- 例外:見開き全面写真/背景ベタが左右にまたぐデザインは、のど側にも3mmの塗り足しをつける指定を求められるケースあり。入稿規定が優先(指示に従う)。
よくあるNG → こう直す
- NG1:クリッピングマスクで“延びて見えるだけ”
→ マスク内の実データが仕上がり外側まで実寸で伸びているか確認。 - NG2:リンク画像のサイズが足りない
→ 元画像を大きめにして再配置。無理なら背景色で補完し自然に繋ぐ。 - NG3:トンボは付けたが裁ち落としが0mmのまま
→ PDF書き出し時に**「裁ち落とし設定を使用」**にチェック。 - NG4:文字がギリギリ
→ 安全エリア3–5mmを守る。小サイズの白文字+細ゴシックは特に内側へ。
早見表(用途別の目安)
- チラシ・ポスター:四辺3mm、文字は5mm内側が無難
- 冊子の本文ページ:天地・小口3mm、のど0mm(※見開きベタは仕様確認)
- 名刺:四辺3mm、ロゴは3–4mm内側
- 大判出力:メーカー規定に従う(3–5mmまたはそれ以上)
書き出しチェックリスト(配布OK)
- PDF/X-4(あるいは先方指定)
- トンボあり+裁ち落とし3mm
- 背景・写真が実体で3mm延長されている
- 文字・ロゴは3–5mm内側
- (冊子)のど側の扱いが仕様に合っている
ダウンロード:入稿チェックリスト(Excel/CSV)
まとめ
- 塗り足し3mmは、断裁誤差で白フチを出さないための保険。
- 安全エリア3–5mmで文字・ロゴを守る。
- PDF/X-4+トンボ+裁ち落としを書き出しの“固定セット”に。