種類は問わず、展示会に参加する度に思うのは、「意外と印刷物あるな!」です。
ペーパーレスやデジタル化と謳われ数年が経ちますが、印刷物は根強く生きている。
その理由は何かにつけ、印刷物の方がまだいいからだと思っています。

展示会では、企業それぞれに配布しているモノが違い、内容だけでなく、印刷の仕様・話し掛け方・情報交換までのプロセス全て楽しく見させてもらっています。

今回はそんな印刷物の部数はどうやって決めているのか考えたいと思います。
私なりに、感覚ではなく、数字に基づいて部数の決め方、また配布の仕方について考えてみました。
よかったら、目を通していただき、少しでも皆様の何かしらのご参考になれば幸いです。
また、意見もいただけると大変嬉しく思います。

この記事のゴール

  • 必要部数を“計算式”で一発決め
  • サイズの使い分けを目的別に最適化
  • 当日の在庫配分と渡し方まで運用を標準化

テンプレも用意しました ↓展示会配布物_計算テンプレート_2025.xlsx


まず決める5要素(ここを数値化すると設計が早い)

  1. 来場予測(V):主催者発表や過去実績から。
  2. ブース接触率(c):来場者のうち、話しかけられる/立ち止まる割合。目安 5〜12%。
  3. 配布率(p):接触した人のうち、資料を受け取る割合。目安 60〜85%。
  4. 回収率(r):接触した人のうち、名刺/QR登録をしてくれる割合。目安 25〜45%。
  5. 余剰率(s):不足防止の上乗せ。目安 10〜20%(最終日は低め)。

まずは仮置きでOK。印刷は“後から足せない”ので、迷ったら余剰率で調整します。


必要部数の計算式(テンプレ)

方式A:目標リードから逆算

「名刺交換×◯件を取りたい」から部数を出す
必要部数 = ⌈ 目標名刺交換数 ÷ r ÷ p × (1 + s) ⌉

:名刺交換 300件 / 回収率 r=0.35 / 配布率 p=0.8 / 余剰 s=0.15
→ 必要部数 = ⌈300 ÷ 0.35 ÷ 0.8 × 1.15⌉ = 1,232部

方式B:来場数から積み上げ

「来場◯万人で、うち何%に渡せるか」から部数を出す
必要部数 = ⌈ V × c × p × (1 + s) ⌉

:来場5,000人 / 接触率 c=0.07 / 配布率 p=0.75 / 余剰 s=0.15
→ 必要部数 = ⌈5000 × 0.07 × 0.75 × 1.15⌉ = 302部

実務では**AとBの“大きい方”**を採用するのが安全。
(テンプレは両方計算→自動で大きい方を採用します)


サイズ別の使い分け(A4/A5/QR名刺/ノベルティ)

A4チラシ(片/両)

  • 向き:製品比較表・価格表・事例図版など“机上で読み込む”情報
  • 強み:1枚で完結 / 商談で裏面にメモ
  • 弱み:重量・かさばり
  • こんな時に:アポ化に事例が効くBtoB新規

A5パンフ(4〜8P)

  • 向き:コンセプト→要点→CTAを“短冊”で通す
  • 強み:軽い/配りやすい/捨てにくい
  • 弱み:詳細はWeb誘導が前提
  • こんな時に:来場者の比較検討が激しい大型展示

QR名刺(カード)

  • 向き興味高い人だけに渡してすぐ登録へ
  • 強み:超軽量/配布スピード/在庫リスク低い
  • 弱み:説明量が載らない
  • こんな時に:接触数が多い/会期中のMAトラッキングを強化したい

ノベルティ(+台紙)

  • 向き:ブランド想起/長期接触
  • 強み:手に取ってもらいやすい
  • 弱み:コスト高/“ばら撒き”でCVが薄くなる
  • こんな時に:新規カテゴリで認知を広く取りたい

原則:A5 or QRカードを基準に、A4は面談用に厚めに持つ。


コスト/物流の現実(重量の目安と搬入リスク)

紙の重さはgsm × 面積で概算できます。

  • A4(210×297mm):面積0.06237㎡ → 90gsmで約5.6g/枚
  • A5:その半分 → 約2.8g/枚
  • 名刺(55×91mm・220gsm):面積0.004995㎡ → 約1.1g/枚

重量から逆算するポイント

  • 1,000部:A4/90gsmで約5.6kg、A5で約2.8kg
  • 箱数の目安:A4は500枚/包が基準。必要部数÷500でざっくり箱数。
  • 搬入
    • 会場直送は前倒し着になりがち→手持ち分(10〜20%)を別送/持参
    • 雨対策:外装はクラフト、内包にシュリンク包み+(乾燥剤)。
    • 最終日余り:回収便/配布先(営業所・代理店)を事前決め。

テンプレの「サイズ&重量」シートで、部数→重量(kg)が自動計算されます。


当日の運用:配布トーク台本と在庫配分

配布トーク(3秒→15秒→深堀り)

  1. 3秒フック:「◯◯の比較表です。30秒で違いが分かります。」
  2. 15秒要約:「導入規模別の費用と効果を1枚にまとめました。裏に事例2件です」
  3. 深堀り(反応あり):「もし◯◯課題なら2分で要点だけご説明→お名刺交換よろしいですか?」

目的は“ばら撒き”ではなく、トークの布石高温度の人に厚めの資料を渡す。

在庫配分の定石(単日/複数日)

  • 単日:午前35% / 午後45% / 予備20%
  • 3日間:1日目35% / 2日目45% / 3日目20%(来場ピークが2日目想定。最近は水曜〜金曜開催が多い。)
  • 時間別再配分:各2時間で在庫棚卸→消化率<計画80%なら配布トークを強め、>120%なら“カード中心”に切替。

すぐ使える“標準セット”例(BtoB新規/3日間)

  • A5パンフ:2,000部(面談・郵送フォロー用にも回す)
  • A4比較表:600枚(商談席/高温度のみ)
  • QR名刺:2,500枚(回転用、名刺交換/MA流入を稼ぐ)
  • ノベルティ:300個(予約商談/既存顧客・メディア向け)

合計重量/箱数はテンプレに数字を入れれば自動で出ます。


よくある失敗 → 回避策

  • “配るための資料”を作る:CV動線が弱い → A5で要点→QRで詳細に分業。
  • 初日で配り切る:在庫曲線を決めずに乱配 → 時間別の消化率管理をルーチン化。
  • A4ばら撒き:重い/読まれない → A5基準+A4は商談専用
  • QRの遷移が遅い:LPが重い/フォーム長い → LP軽量化とフォーム短縮(名刺撮影入力)

まとめ

  • 部数は数式で決める(A/Bの大きい方)
  • サイズは役割分担(A5=基準、A4=商談、QR=回転)→A5でなくても、B5より小さいサイズ。変形でも可。
  • 当日は在庫×トークを2時間ごとにチューニング

テンプレDL

  • 展示会配布物_計算テンプレート_2025.xlsx
    (「計算」シートで数字を入れるだけで必要部数/最終採用部数を自動算出。「サイズ&重量」シートで総重量も概算できます)

最後に

印刷物のご相談お待ちしております。