この記事でわかること

  • 中綴じ/無線綴じの適正レンジと判断フロー
  • 背幅の計算式(紙バルク・PPの有無・糊分まで) → 超便利ツール後述
  • ページ数の数え方の落とし穴(折込・観音・差し込み)
  • のど逃げ(クリープ)紙目ミゾなど製本周りの実務

1) 綴じ方式の適正レンジと判断フロー

まずはここから。迷ったらこの順に判断すればOK。

フロー

  1. ページが4の倍数か(中綴じは必須)
  2. 仕上がり厚み(本文 + 表紙 + 糊)が3mm未満なら無線綴じは注意 → 対応できない
  3. 使い方が配布物・パンフ中心 → 中綴じ優先/保存性・ボリューム重視 → 無線綴じ

目安表(現場感)

用途/条件中綴じ(ホチキス)無線綴じ(背に糊)
ページ数の目安16–48p(薄紙なら〜60p)48p〜上限は装置・背幅次第
仕上がりの平坦さ○(薄いほど◎)背幅が出る(書籍感)
コスト・納期◎(短納期・安価)○(ややコスト・工程増)
開きやすさ○(PURなら開き良)

中綴じの上限は紙厚×ページで変わります。厚手(110–135gsm)や上質紙は早めに限界が来やすい。


2) 背幅の出し方(無線綴じの式と実務の足し算)

基本式(mm)

背幅 = 本文束厚 + 表紙厚み + 糊余白 + 仕上げフィルム厚(片/両面PPなら)

本文束厚は紙の“かさ(バルク)”を使って見積もります。

本文束厚 = (本文ページ数 / 2) × (gsm × バルク / 1000)
  • バルク(厚さ係数)の目安
    グロス≈0.80 / マット≈0.90 / 上質≈1.20(銘柄で差あり)
  • 表紙厚み:コート220–260gsmで0.40–0.55mm程度が多い
  • 糊余白0.3–0.7mm(EVA<PUR)
  • PP(ラミ):フィルム25μ = 0.025mm/面(両面なら×2)

計算例
条件:本文64p/90gsmマット(バルク0.90)/表紙0.50mm/糊0.50mm/片面PP 25μ(0.025mm)

  • 本文束厚 = (64/2)×(90×0.90/1000) = 32×0.081 = 2.59mm
  • 背幅 = 2.59 + 0.50 + 0.50 + 0.025 = 3.62mm → データ設計は3.6〜3.7mmで安全側に

工場によって最小背幅3mmなどの制約があるため、薄物は事前確認必須。


3) “背幅以外”で仕上がりが変わるポイント

(1) 紙目(しめ)

  • **背と平行(縦目)**が基本。開きや反りに直結。
  • 横目を混ぜると反り・割れの原因に。

(2) ミゾ(ヒンジ)

  • 表紙の背両側に入る押し痕。6–8mm前後が多い(機械差あり)。
  • カバーや表紙データでは背幅+ミゾの位置をガイド化しておく。

(3) のど逃げ(クリープ)/中綴じ限定

  • 中央に近い面ほど小口側にずれる現象。
  • 目安:1枚の紙厚×(中央からの枚数)で小口側を逃がす。
    例:本文48p(=12葉)、本文紙厚0.09mmなら、中心近くで約1mm
    逃がす…など。
    → 見出し・ノンブルはのど寄せ禁止

(4) フィルム・ニス

  • グロスPPは色が締まり濃く見えるマットPP軟調に。
  • PPは前述の通り厚みにも加算。

4) ページ数の数え方の落とし穴(必読)

  • 観音(折込)・蛇腹・差し込み:面数の扱いがズレやすい。製本仕様書に別記
  • 扉・口絵の別紙:用紙銘柄が異なると束厚に影響。
  • 見返し・遊び(上製や厚物で発生):本文pに含めるか別カウントか、事前合意。
  • 4の倍数調整(中綴じ):白ページ活用おまけページの提案で自然に帳尻。

5) カバー/表紙展開の寸法設計

  • 表紙ジャケットの横寸(無線綴じ):
    仕上がり横×2 + 背幅 + ミゾ両側分(各6–8mm)
  • 袖(フラップ)70–100mmが多い(B5/A5はやや短め)。
  • 背タイトル:背幅が5mm未満は詰め。6mm以上で可読。
  • 背景柄背位置の見切れに注意(背・小口で段差が出るため)。

6) よくある失敗 → 即対処

  • 背幅0.5mmズレ:紙銘柄変更・PP追加・湿度で起きる。±0.2〜0.3mmの遊びを持たせる。
  • 中綴じで“山”が出る:ページ過多。紙を薄く or 無線綴じへ
  • のど側で文字欠け:クリープ見込みが不足。内側3–5mm安全エリアを常に確保。
  • 背割れ(表紙の割れ)紙目×PP×折り筋の調整+PUR検討。

7) すぐ使える「現場の目安表」

紙バルクのざっくり値(銘柄で差あり)

  • グロス:0.80 マット:0.90 上質:1.20

中綴じの上限(だいたい)

  • 70–90gsm:48–60p
  • 110–135gsm:32–48p

PPの厚み(仕上がり加算)

  • 片面PP 25μ:0.025mm
  • 両面PP 25μ:0.05mm

8) 超便利!背幅計算ツール


まとめ

  • 中綴じ4の倍数必須、上限は紙厚×ページで決める。
  • 無線綴じの背幅は「本文束厚+表紙+糊+PP」で安全側に。
  • 紙目・ミゾ・のど逃げまで見ておくと、現場トラブルが激減